柿渋染

 2014年5月に近江麻の産地、東近江市を訪れました。
今回は「柿渋」のはなし。
20年来人気の高い「柿渋染バッグ」などの、日本の伝統・天然素材が作られる現場へ、赴きました。
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今回伺ったのは株式会社おおまえ さん。
社長とご子息に、たくさん話を伺いました。

まず作業場へ向かいます。
かなり広大な敷地に並ぶのは、柿渋で染めた反物を広げて乾燥するハウスです。
天日干しされた柿渋の反物が敷き詰められている光景は圧巻です。

昨今では日本の柿渋染製作現場において、このように並々ならぬ手間と時間のかかる「天日干し」の作業光景が見られるのもまれになったようです。
そんな広い土地を確保できる場所がなかなかないからです。
ハウスなので真夏の気温は相当なものになるそうで、何度も柿渋を塗り重ねる作業は気力と体力が要求されます。
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こちらは、布を柿渋で染める作業場所。
柿渋独特のにおいを感じます。でもこれは、天然素材ならでは。近頃は無臭の柿渋もあるようですが、こちらではそういったものを一切使用せず、あくまでも「天然素材の柿渋」を大切にされています。
 

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そして柿渋の液。何年も熟成されたものがやっと製品に使用されます。
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柿渋に染めた糸は、このように干します。
柿渋が太陽の光を浴びることは、天然染料としての特性を活かす重要な工程です。強度も耐水も、この工程で確かなものとなります。
ですのでおおまえさんは渋を染める時には 天気予報を聞き、お天気が定まった日を選び、その日の 陽の上がらぬ午前3時頃から準備を始めるそうです。柿渋に昇る陽光をたっぷり浴びさせて 、色を引き出しているのです。
水と太陽の賜物でこの色に育つのだなあと、自然に感謝し、またその自然の恵みを丁寧に製品として私たちにつなげてくださる職人さんの技術と労力に、感謝せずにはいられません。

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【柿渋について】

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柿渋染の原材料は、山柿・豆柿と呼ばれる天王柿など、カキタンニン含有量が多く渋みの強い品種の良質な青い柿(渋柿)を用います。
その柿渋を採取したのち、まず洗い・粉砕・圧搾した汁液を濾過します。
そして殺菌発酵を経た後、最低でも三年は熟成・貯蔵して出来上がります。

出来上がった赤褐色で半透明の液体を柿渋といい、その柿渋を用いて染めた後、天日干しをしたものを「柿渋染め」と呼びます。
柿渋の色味は、繰り返し染めることで一層増します。


柿渋は、暮らしに寄り添い人々を守る、なくてはならない染料でした。
その土地の文化、風土によってひろく利用されておりました。
古い書物の記載では、平安時代には「柿衣」として宗教的に山中の瘴気をさける力があるとされ、すでに山伏の法衣として利用されていました。京都でも、禅宗の僧侶の麻製の黒衣は柿渋染の物でした。滋賀県では柿渋で染めた野良着に鉄分を有する水に浸け、色の変色を防ぎ強靭な布にする「クレ染」が存在しました。
また長野県では木綿の白生地を何度も染め、水はけがよく濡れても水の切れがいい「渋よっこぎ」と呼ばれる山袴があり、それも柿渋で染めたものです。激しく山野をかけめぐり、渓流で魚を追う生活に好適であったとされています。

柿渋はこのように化学染料など存在しない遠い昔より、人々に寄り添ってきました。
柿渋の効用・効果を利用した様々なものは身近にたくさんありました。


その理由として、カキタンニン成分には防腐・防水・防虫作用があり、漁網や釣り糸、桶や傘、米びつ、木材建築の塗装の下地、外壁などに用いられ、更に紙に塗って乾燥させると固く頑丈になり、防水機能も有するようになるため、うちわや傘など、人々の暮らしに寄り添うように柿渋は古くから存在していました。
またタンニンが水溶性タンパク質と結合して沈殿を生じる性質は、酒造家では濁り酒や醤油のオリを取り除く「オリ下げ剤」として使われたり、民間薬としても用いられ、高血圧降下剤としてや、やけどの塗り薬、二日酔いの薬などにも使われておりました。


環境立国ドイツでは早くから日本の柿渋に注目しており、木材の防腐剤などとして輸出されています。柿渋はいまや世界に認められるエコな染料として、海を渡ってもその品質を誇っています。


楽居布では今後も柿渋で、天然素材の素晴らしさ、気持ちの良い暮らしの提案をして参ります。


※ホームページ掲載にあたり、株式会社おおまえ様のサイトより数点画像を転載させていただいております。